ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

バスの運転手さんについて

 朝のバスの乗降の話。普段私が使っているバスは乗客は前方の乗車口から乗って中央の降車口から降りるというしくみで運用されている。例外はターミナル駅に停車した時で降車するお客さんが多いため乗降口両方を開放する。
 このルールはおそらくバス会社で規則として決められていて乗車口から降車することはできない。バス会社が降車口の利用を強制するのは(降車しやすい位置で停車するなど)おそらく安全面が配慮されてのことだと思う。

 ところが朝のバスは通勤客で満員で乗車口付近の人が降車する場合、降車口まで人をかき分けながら移動しなければいけない。とりわけ小さい子供や初老の方が移動するのは見ていてこちらも気の毒になってくる。
 ところが先日、乗車口付近にいた初老の女性が「すみません、すみません」と言いながら降車口に向かわず近い方の乗車口に移動して運転手さんに乗車口を開けるようにお願いしていた。運転手さんは一瞬「降車口(から降りてください)」と言いかけたけど結局乗車口を開放した。
 会社で決められた規則を破りもしお客さんが怪我でもしたら規則を破った運転手の責任になってしまう。けれど運転手さんは自分の保身よりお客さんの利便性を取ることを善とした。しかし、朝の混雑するバスで初老の女性にとって負担のかかる降車口より乗車口から降りることが善となる。これが自己本位すぎるとは言えないと思う。
 私は運転手さんの真横に立っていてその次第を見ていたけどその対応を見て切なくなった。この運転手さんが相手にしているのは一人の女性でなく世間だと思う。社会的弱者に降車口まで通り道を開けてくれない世間、女性のお願いを断ったら乗客全員(世間)を敵に回す。そういった思考はいつも運転手さんのなかで起こっているのだろう。もしくは、乗車口を開放したのはその思考を超越した運転手さんの優しさか。そんな運転手さんの気持ちが私に伝わってきた気がする。「あ、この人は我慢して自分を犠牲にしている」と思った。

 本来なら乗客の安全のためリーダーシップをとるべき運転手さんが一番弱者になっている。それをみて私は切なくなった。運転手さんも一人の人間なのだから大切にしてあげようと思う。