ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

悪童日記 アゴタ・クリストフ

仕事をしていると理性が必要になるときがある
 仕事をしていると理性的な判断を必要とする時が必ず来る。納得がいかいなときや関係者に嫌いな人がいたりすると仕事を放りだしたくなる。そんなとき理性的な判断に基づいてなにをやるべきなのか冷静に見つめ直すことが重要になる。でも口で言えるほど簡単なものじゃない。感情はとても厄介だ。

海外の小説の特徴
 理性的といえば冷徹で理性的な小説は海外のほうが優れているように思う。怖いくらいに描写が生々しい。それは事実を積み重ね理性的に判断してきた文化・思想の歴史がベースになっているからかもしれない。一般的に理性的な文章は感情を揺さぶらないはずだけど読んでいて切なくなる。

悪童日記の説明
 世界大戦期のハンガリー。生活が苦しくなった母親からおばあさんに預けられた双子の兄弟。彼らは自分達だけで生きていけるように自分たちを鍛え傷つける。例えば(大人から殴られても大丈夫なように)お互いに殴り合って痛みに強くなったり、(大人から罵られても平気でいられるように)罵倒しあったりする。子供とは思えないほどとても冷徹な双子。

ここがいい
 ある日彼らは乞食のふりをして町の軍人や婦人たちに物乞いをする。

婦人が通りかかる。ぼくらは手を差し出す。彼女が言う。
「かわいそうにね......。私には、あげられるものが何ひとつないのよ」
彼女は、ぼくらの髪をやさしく撫でてくれる。
ぼくらは言う。

「ありがとう」
(中略 このあとも物乞いを続けて何人かの婦人から林檎やビスケットをもらうのだけど乞食をしている理由を聞かれた兄弟は)

「乞食をするとどんな気がするかを知るためと、人びとの反応を観察するためなんです」
婦人はカンカンに怒って、行ってしまう。
「ろくでもない不良の子たちだわ!おまけに、生意気なこと!」
帰路、ぼくらは道端に生い茂る草むらの中に、林檎とビスケットとチョコレートと硬貨を投げ捨てる。

 髪に受けた愛撫だけは、捨てることができない。

悪童日記 アゴタ・クリストフ

こんな悲しくて美しい表現があるだろうか。物語は淡々として叙述的に表現されるけど感情を揺さぶる。兄弟二人だけで生きていくための知恵が時として大人を怒らせ兄弟から大切なものを奪っていく。読んでてとても切なくなる。