ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

市川拓司 ぼくが発達障害だからできたこと

 市川拓司が発達障害者だと知らなかった。著作のいま、会いにゆきます」を読んだことがあるけどフワフワした世界観でロマンチックな話という記憶。

 市川さんは小学生のときから多動・多弁がもとで辛い思いをしたり、躁鬱の母親を抱えて母親が死んでしまうかもという不安にかられる。就職して社会に出たら障害のため不適合で苦労する。それでも、いまの奥さん(高校の同級生!著作だけでなく人生も純愛)と知り合い不安定な人生を送りながらも書き続けた小説がヒット。それを振り返って市川さんは、

 ぼく自身はちっとも変っていない。障害を克服したわけでも、無理して人格を矯正したわけでもない。生まれたときから、ぼくはぼくだった(当たり前ですが)。

 作家になるために大学の文学部に入って勉強したわけでもないし(っていうか、それは無理)、文豪たちの小説を読んで、それをお手本に習作を重ねたわけでもない。

 生きてきた道のり、いつも思っていたこと、それを自分の言葉で、ふだんしゃべってるように書いたら、なんだかとてつもない、それこそ夢のような夢に手が届いてしまった。*1

 まったく自分の生き方は変わっていないという。そして、自分の生い立ちや生き方を振り返りながらそれをファンタジックに分析し小説のモチーフとしてきた経緯を説明する。

まずは、自分はテナガザルタイプの原型であると考える*2

 (日本的な)ヒエラルキーを持つ社会を形成するチンパンジーでもなく、男性的強さを軸とする社会を形成(一夫多妻制)するゴリラでもなく、孤独癖のある厭世家なオランウータンでもなく、自分は家族単位で社会を形成するテナガザルであるという。家族以外との社会と関係をなるべくなくし、自分にとって大切な家族だけと濃い関係を求める。それが市川さんの理想。話がそれるけど自分の生き方を動物に例えるなんて本当にロマンチスト。
(私たちの多くは収入を得るため社会との関係を切れないけれど)小説作家のような創造的な仕事をする人なら発達障害を持ってても(いろいろと生活しずらさはあるだろうけど、少なくとも収入を得るという意味では)やっていけると思えてしまう。

世界共通言語であるこの世界観ーそして感傷やノスタルジーは、人種や国境、宗教を越えてちゃんと伝わっていく(中略)
 嬉しいですねえ。*3

 金銭的な成功だけでなく、自分のありのままを書いた小説が世界中でヒットしている。それに対する悦びが伝わってくる。

 

 全体を通して著作の引用などもふんだんに使ってそのときのモチーフを自分の生き方になぞって説明していく。発達障害に興味がなくても市川拓司ファンなら読んでみても良いと思う。

*1:ぼくが発達障害だからできたこと 市川拓司

*2:ぼくが発達障害だからできたこと 市川拓司

*3:ぼくが発達障害だからできたこと 市川拓司