ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

神戸製鋼の問題

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神戸製鋼が強度不足で不合格な鉄鋼などのデータを改ざんして出荷していた。鉄鋼などは車や鉄道、飛行機などに使われるため強度不足は人の命を奪う大事故につながる場合がある。

 記事を読むとこの改ざんは取締役会でも周知らしい。では取締役会の道徳概念をゆがめるほどのストレスを与えるものはなんだろうか。株主、競合、お客様、そんなところか。ちなみお客様は今回被害を被っている。結果として自分達にとって大切なものを裏切ってまで取締役会で押し切らなければいけないものとはなんだったのだろう。

 不正が始まったのは10年ほど前らしい。その時日本はバブルがはじけて10年以上。国全体の成長が滞ってどこの会社も業績が伸びず苦しい時期だった。不況で物が売れないため定番の効率化、コストダウン、業務改善をやりつくしそれでも景気回復が見えない世の中。トンネルの出口が見えずみんな疲れを覚える。そんな時ちょっとしたほころびが生じたのかもしれない。

 強度について言えば一般的に鋼材が利用される環境ギリギリ耐えるようなものは出荷しないと言っていい。業界によってまちまちだけど安全率といって実際の利用環境で発生しうる過酷さの3倍以上の余裕のあるものを出荷する。例えばそこに2.9倍の強度しか担保しない鋼材が出来たらどうなるだろう。おそらくそれで出荷しても現実的に問題ないだろう。しかしそのために製品を最初から作り直したら大きな赤字になる。だからちょっとだけ問題があるけど見逃してね、となる。10年前の発端はそんなところから始まったのかもしれない。不況の中、株主や競合を恐れる取締役会が大赤字を発生させる決断をすることはないだろう。その風潮は現場から徐々に神戸製鋼を蝕んでいったのじゃなかろうか。

 不正を抑制するには会社として理念や文化を従業員に徹底させ道徳心を支える方法がある。けれど個々人でも自分にとってなにが善であるか意識することも大切だと思う。私が作った製品を誰が使うのか。それが利用される状況を具体的にイメージすることだと思う。例えば車に使う鋼材の強度に不足があったら交通事故で人が亡くなるかもしれない。そうイメージすればそう簡単にいい加減な製品は出荷できなくなると思う。