ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

絵と壺

 芸術が好きな人は多いと思うけどどんなジャンルが好きか人によって変わってくる。私は西洋絵画が好きでよく見に行く。さらに西洋画でもジャンルやモチーフによってその好きの度合いが変わる。私の場合、印象派が好きでかつモチーフは人物>風景>>静物と好きな順番がある。特に静物はどんなに有名な人が書いていてもほとんど興味がない。果物とか花は無機的であまり楽しめない。数秒見たらすぐに次の作品に移動する。

 絵画じゃなくて焼き物の壺や皿、漆の箱などが好きな人もいると思う。確かにあんな皿に料理を盛られたら美味しそうと思うことはあるかもしれない。でもこの場合、私は皿に引き立てられた料理が美味しそうにみえるのであって皿に感動を覚えるわけではない。

 上手く言えないけど私の場合、実用的(例えば花を挿す花瓶とか料理を盛る皿のよう)な機能を有する物は感動が薄れてしまう。どんなにデザインに工夫をこらしてもどこか実用性の影を含んでいて生々しさや不純物が含まれているように感じる。純粋に芸術性という目で見れなくなる。そもそもデザインとは芸術ではなく究極の利便性や機能を追求する概念なのだろう。だから皿も料理を引き立てる機能をもった物という見方をしてしまう。その時点で(私からすると)芸術の領域から外れてしまう。

 一方絵画自体は実用とは対極に位置する。(有名な画家の作品は売ればお金になるからある意味実用的ではあるけれど)絵画自体は効率性や利便性といった実用的な性質がない。あるのは好きな絵を見ることの居心地の良さや自分の中の無意識な価値観の発見である。

 純粋な芸術とは実用性さえも淘汰したもの。実用性を無視したうえで人を惹きつけると私は思う。そんな芸術を追い求めるストイックさが私を惹きつけるのかもしれない。