ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

金曜のバカ 越谷オサム

 社会との関係性が上手くいかないときがある。たまにそれは自分の一人相撲だったりするわけだけど本人はそれに気づかない。なんとかして今の状態から抜け出そうとあがくけど周りが見えていないため迷惑をかけまくる。あとから思い出すとそれを受け止めてくれる人がいたことに気付いて感謝する。

 

 「僕」は専門学校を1年で中退しアルバイトも続かない深夜のバラエティ番組に毒づくようなニート。そんな「僕」が道端で出会った女子高生「カナ」に恋してしまう。
 けれど「僕」のアプローチはおかしくて、あろうことか毎日藪に隠れて前を通り過ぎるカナを観察するストーカーになってしまう。そんなある日見ているだけで満足できなくなって声をかけようとしたら、カナが逃げだしたためとっさに追いついて後ろからだきついてしまう。

突然、女子高生が消えた。そして次の瞬間、世界が縦回転した。なんだ?

ごん

鈍い音と同時に、目の周りに火花が散る。音からしばらくして、後頭部にズキズキと痛みを感じはじめた。

「僕」は女子高生に投げられて自分が敗北を悟る。一方カナは、

「勝った!」 

人気のない通学路を疾走しながら、私はなんどもわめいた。「勝った! ウピー! 勝っちゃった! 投げ飛ばしてやった!」

 勝利の味をしめてしまう。

 自然とそんな二人は恋に落ちるのでなく格闘技で勝負するようになる。まるで武士と武士がお互いを尊敬しながら勝負を重ねるように。


 それと同時に「僕」のなかで何かが変わっていく。カナに勝つために格闘技の書籍を買いに言った書店でちょっとした理由からアルバイトを始めてしまう。毎日格闘技の専門書を読みながら筋トレを重ねる一方、書店のアルバイトが軌道にのりはじめる。そして毎週金曜日にカナに勝負を挑むという規則正しい(?)生活を過ごしていく。

 けれど「僕」はふと思ってしまう、

このまま戦いがエスカレートしていたったら、そのうちどちらかが取り返し のつかない怪我をしてしまうのではないだろうか。僕はいつまで彼女に甘えるつもりなのだろうか。

ここでやっと二人の関係がわかる。つまり居場所がなくて世の中を憎み続けている「僕」を相手にしてくれるのがカナだったとそこで気付く。やり場のない怒りをぶつかり稽古という形でうけてめてくれたのが「カナ」だった。

 

 (総評)越谷オサムなので例の身もだえするような恋愛小説かと思っていたら青春小説でした。