ポコあポコ

タイトルは学生時代に読んでいた小道迷子さんの競馬の4コマまんがから頂きました。登場するゆるくて憎めないキャラクターが良いです。

人工知能はどこまで人の意識を模倣できるのか

 最近、機械学習とか人工知能とか流行で、いろいろ文献に目を通しています。今日はその中の一冊をご紹介。

 世の中が、人工知能に対して、少し期待しすぎな気もしますが、少なくとも人工知能を研究しつづけている人たちは、心や意識をもつロボットを作ろうとしてますよ、というお話。その人たちによると、ロボットが心や意識をもつには、少なくとも、以下の課題をクリアする必要があるそうです。

  1. ロボットは物体概念を獲得できるのか?
     センサー(カメラやマイク、触覚センサ)と駆動系(ロボットハンドなど)があれば、ロボットは物の概念を自律して獲得できるそうです。
     例えばテーブルに置いてあるコップをカメラで見て掴んだり、コップをテーブルに打ちつけるなどすると、自分が掴んでいるものは、筒のような形状で、硬く、他のものに打ちつけると、コンコン音がするという物体の概念を認識するそうです。この概念は、ロボットがセンサから取得した、映像や音などのデジタルデータから取り出した、特徴的な信号であり、それはリンゴのように認識の対象が変われば当然変わってきます(赤い、丸い、(コップよりは)柔らかい)。ロボットはこの作業をくりかえすことにで、世の中に存在する物体の概念を持つことができるそうです。

  2. ロボットは単語を認識できるのか?
     ロボットは入力された文章を、一文字づつ分解して、後に続く文字の出現確率を見ることで、文字の集まりを単語と認識するそうです。
     例えば、「今日はあついなぁ。・・・」という文章があるとします。最初の文字が「今」で次の文字が「日」です。この2つの文字は、それぞれ独立して意味をもつ単語が2つと考えることもできます。しかし、すべての文章で「今」と「日」を別々の単語として分割してしまった場合、全体的に「今」の後に「日」が続く確率が低くなります。(例えば、「今まで」とか、「今にも」とか普通に用法としてありますよね)。つまり、確率的に考えると「今」と「日」は2つでセットの単語と考えたほうがつじつまがあうのです。ロボットはそうやって、確率的に判断することで、文章から単語を認識します。つまり、新聞の記事を入力すれば、その中の単語を全て語彙として獲得できるということです。

  3. ロボットは物体の概念と単語を関連づけできるか?
     1において物体の概念を、2において物体や行動を表す単語を獲得しました。ただし、それぞれが独立しているため、ロボットが物体を見ても、それが何であるか人に伝えることができない。さらに、人の話を聞いても、ロボットはどの物体について話しているか理解できないままです。そこで、1と2を関連づけすることで、初めてロボットは、人が話すことを理解したり、人に話かけることができるようになります。
     じゃあ、どうやって関連づけするかというと、人がロボットに話かけながら行動するのを、ロボットが見ることで、ロボットは物体の概念と単語を関連づけを学習します。
     例えば、人が「リンゴを持つ」と言いながら、テーブルの上のリンゴを持ち上げる、という動作を色々なバリエーションでみせることで、ロボットは物体の概念と単語の関連付けを学習します。

 この後も話が続くのですが、結論として、じゃあこれで、ロボットは心や意識を持つことができるのかというと、人工知能の専門家はそうは考えないそうです。なぜなら、まず①そもそも、心や意識の定義が曖昧である。そして、②人が意識するという現象が科学的に解明されてない以上、ロボットが自立的に考えて行動を起こすというモデルを考案しても、人と同じプロセスで動いているか実証できないそうです。

 じゃあ、意識を持った人工知能は、近い将来に実現できるかといえば、私はまだ先のことと考えています。今の人工知能のブームを支えているのは、機械学習の一部でブレークスルーが起こりかけているからですが、あくまでそれは、上記で述べたたとおり、ロボットが入力された情報から、確率的にもっともらしいことを選んでいるだけです。そして、それが、たまたま人が行動する結果と一致するだけで、なぜ行動が一致するのか?という原因は判っておりません。本当に意識を持った人工知能は、ブレークスルーがあと1ダースくらい起こらないと、実現しないんじゃなかろうか。